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損保協、企業保険の引き受けで新方式 手順書を策定(2025年3月22日日経記事を中心に)

  日本損害保険協会は3月21日、複数の損保会社が保険金支払いのリスクを分散して引き受ける「共同保険(注1)」の手法について、各保険会社の保険料を統一せずに組成する「ディファレンシャル方式」の手順書を策定したと発表した。

共同保険は組成する過程で、低い保険料を提示した幹事会社に他の保険会社が保険料を合わせるビジネス慣行が起きやすい。金融庁の有識者会議は企業向け保険料の事前調整問題を受けて、共同保険の慣行を見直すよう求めていた。

現行の共同保険は1つの保険契約を複数の保険会社が共同で引き受ける。幹事の損保会社と同一の保険料率をほかの損保会社も使うため、企業側は契約の管理がしやすい。

一方、ディファレンシャル方式は幹事会社の保険料率にかかわらず、それぞれの損保会社が保険料率を算出し、合計額を保険料とするので管理が複雑になりやすい。

損保各社が新方式で保険を引き受けるには、システム開発や事務処理の体制整備が必要になる。ディファレンシャル方式を取り入れる際に「顧客の契約管理の負担が極力重くならないようにしたい」と説明した。また、シンジケートローン(協調融資)を参考にした「アレンジャー方式(注2)」も引き続き検討する。

(注1)共同保険

共同保険とは、リスク分散、あるいは保険契約者と損害保険会社との取引関係等の事情から、1つの損害保険契約を複数の保険会社が共同で引受ける契約形態をいう。

この方式では、個々の保険会社は自己の引受割合(シェア)に応じて、権利(保険料の収受)を有し、義務(保険金の支払い)を負う。

(注2)シンジケートローン(協調融資)を参考にした「アレンジャー方式」

シンジケートローンとは、顧客の資金調達ニーズに対し複数の金融機関が協調してシンジケート団を組成し、一つの融資契約書に基づき同一条件で融資を行う資金調達手法。 

顧客企業が、アレンジャー(幹事金融機関)との間で保険料・引受限度額等を一定の幅の中で合意しつつ、アレンジャーに対して具体的な共同保険の組成を委託するもの。アレンジャーと参加保険会社との間で秘密保持契約を締結した上で、アレンジャーが参加保険会社に対し顧客企業が承諾した情報のみを提供しつつ、参加保険会社の引受可能なシェアを考慮しながら、各損害保険会社と交渉して共同保険を組成する。

(注3)共同保険と再保険

共同保険は再保険と同様に多数の保険者の間で危険を分散する方法であるが、再保険は複数の契約からなるが、共同保険は1つの保険契約を複数の保険会社が引き受ける契約である。

再保険では、元受保険会社が、自ら引受けた保険契約の責任の一部を他の再保険会社に移転する契約であり、元受保険契約と再保険契約は別の契約(複数の契約)となる。

このため、再保険会社が破綻した場合には、元受保険会社がそのリスクを負担することになる。

一方、共同保険では、保険会社1社が幹事会社となり、各分担保険会社を代表して、契約者との契約交渉、申込書の作成や保険料の収受などの事務手続きや、保険証券の発行(代表証券という)、および保険事故の調査・処理にあたり、幹事会社以外は自己の引受け割合に応じて保険金を負担して支払う。(実務としては、幹事保険会社が分担保険会社分もまとめて保険金を支払い、分担保険会社から分担保険金分を回収することになる。)

このように、対加入者との関係において、再保険が、1保険会社(元受保険会社)のみが加入者と直接関係にたち、他の保険会社(再保険会社)は背後に位置するのに対して、共同保険では、すべての保険者が加入者に対して表面(直接の関係)にたち、かつ並立している。

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