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テスラが変える自動車保険、安全スコア駆使、3割安も(2023年6月12日日経記事を中心に)

デジタル技術で保険のあり方を変える「インシュアテック(保険テック)」が台頭し始めた。米テスラがデータを駆使して自動車保険の作り方を変え、割高な商品を売ってきた保険会社にくさびを打ち込む。

同社ザック・カークホーン最高財務責任者(CFO)は「2022年末に保険料収入が年3億ドル(約420億円)規模に達し、四半期の成長率は20%と自動車販売より高い」として、同社が開発する通称「テスラ保険」の事業拡大に自信を見せた。

米国では年齢や性別、事故・違反履歴によって決まる自動車保険料を支払うのが一般的だが、テスラ保険は、こうした情報を利用しない。加入者は走行距離や保有車種・台数、居住地、必要とする保障水準の5項目を提供すればすむ。こうした基本的な情報に加えて、テスラ車が自動運転などのために搭載しているセンサー類を活用して導き出す「安全スコア」を活用する。テスラは80億マイル(約128億キロメートル)の走行データを分析し、スコアの算出式を構築、これを利用して一人ひとりのドライバーの走行距離100万マイルあたりの事故発生確率を予測し、0から100の数字で示す。

急ブレーキや衝突警告、先行車両との異常接近が増えるとスコアは下がり、深夜の運転などもスコアの低下につながる。スコアがよければ保険料が下がる仕組みで、「従来よりも20~30%安くなる」(同社)と説明している。カリフォルニア州で始まったテスラ保険の展開地域は12州に拡大し、米国の人口の約4割をカバーする。

日本でもテレマティクス保険を育てる動きはある。あいおいニッセイ同和損害保険は通信車載器で取得した走行データから安全スコアを計算し、保険料を割り引く商品などを発売している。同社のテレマティクス保険の契約台数は180万台を超えた。あいおいニッセイの新納啓介社長は「伝統的な車保険が通用しない世界が確実にやってくる」と話す。

損害保険ジャパンは米保険テックのプロトシュアと組み、約1年かかっていた保険商品の開発期間を数日から数週間に縮める。保険料計算式の開発、帳票の作成などをノーコード(プログラミング不要)で処理し、コスト削減と営業効率の向上につなげるとしている。

モータリゼーションとともに損保は成長し、国内で保険料収入に占める自動車保険の割合は1960年代の1割強から今や約5割に達した。だが既存の保険会社だけでシェアを競う時代は転機を迎えつつある。データのさらなる活用やスタートアップなど異業種との連携の巧拙が生き残りのカギになる。

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