銀行、証券、保険などの金融商品を代理店で一体販売できる「金融サービス仲介業」制度が2021年11月から始まった。これまで銀行、証券、保険と業態ごとに分かれている仲介業の登録を一本化し、預金や投資信託、保険をひとつの登録で提供できるようになる。
例えば、「消費者がショッピングセンター内の保険ショップで貯蓄性保険と投信を比べたうえで、最終的に外貨定期預金を選ぶ」といったことを実現するには、保険ショップが銀行代理業、保険募集人、金融商品仲介業などの許可や登録を受けることが必要であった。
金融サービス仲介業の登録をすれば、銀・証・保の商品をワンストップで扱えるようになる。
消費者の利便性を高めるねらいがある。
縦割りが強い金融業界の革新につながるとの期待がある一方で、新制度の登録を受けて11月2日からサービス提供を始めたのは下記2業者にとどまり、低調なスタートとなったようだ。
①SBIネオモバイル証券
Tポイントを使った株式投資などができる会社だが、新たに同社のHP上からバイクやペットの保険も申し込めるようになった。SBIグループの少額短期保険会社のサイトへ飛び、手続きする。ネオモバイル証券は若年層の顧客が多く、「バイク保険などとも親和性が高い」とみている。
②400F(フォーハンドレッド・エフ)
ネット上で「お金の健康診断」というサービスを提供する新興企業。スマホから居住地、年齢、年収、家族構成などを入力すると、同地域や同年代の人と比べた家計診断ができる。その結果をもとにファイナンシャルプランナーらの助言を受けられるなど、利用者と専門家をつなぐ場を運営している。
その他、楽天証券とSBI証券が新制度への登録を予定しているとのこと。
<課題>
出足の鈍さの一因は提供できる商品の少なさにある。新仲介制度では、下記のとおり取り扱える商品に制約がある。そのため、登録をためらう事業者も多いようだ。
取り扱いが可能な商品
- 銀行:普通・定期預金、住宅ローン
- 証券:公社債、上場株、投資信託
- 保険:定期保険、傷害保険、旅行保険
例えば、証券サービスだと非上場株やデリバティブ、保険関連だと変額保険や外貨建て保険を扱えない。販売トラブルを防ぐため、高度に専門的な説明が必要な商品は対象外としたためだ。業界関係者は「複雑な商品ほど手数料を稼げる。新制度は利ざやの薄い商品しか扱えない」とこぼす。
また、新制度は金融業界以外からの新規参入業者に魅力的な一方で、サービス提供の大元の既存金融機関には目立った動きがない。大手幹部は「我々は(銀行や証券など)全部の駒を持っている。そこをつないだ方が仲介より利便性が高く、効果も大きい」と話す。
一方で、大手生保の首脳は「銀行窓販のことを思い出しても新仲介がこのままで終わりとは思っていない。対応が必要になる」と身構える。保険商品の銀行窓口販売は2001年から段階的に緩和され、2007年に全面解禁された。